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SECTION 01メガネユーザーの3つの選択肢
スマートグラスはその名のとおり「グラス(メガネ)」の形をしていますが、標準状態では度なしレンズ、あるいはレンズ自体がディスプレイの一部になっている製品がほとんどです。つまり、近視や乱視のある人がそのまま掛けても、表示や風景がぼやけて見えます。視力矯正が必要な人の選択肢は、大きく次の3つに整理できます。
一つ目は、度付きレンズ対応を公式に用意している機種を選ぶ方法です。Ray-Ban Meta Optics のように、製品ライン自体が度付きレンズに対応しているケースですね。フレームに直接度付きレンズを入れる方式なので、見た目は普通のメガネに最も近く、掛け外しの手間も増えません。一方で、対応している製品ラインは限られます。
二つ目が、度付きインサートレンズを追加する方法。XREAL などのディスプレイ型スマートグラスで主流のやり方です。本体の内側(目に近い側)に、度数に合わせて加工した小さなレンズフレームをはめ込みます。本体はそのままに視力矯正を後付けできるのが利点で、度数が変わったらインサート部分だけ作り直せます。デメリットは、本体購入とは別にレンズ店での加工が必要になることと、装着時の重量がわずかに増えることです。
三つ目は、コンタクトレンズとの併用です。最も手軽な方法で、追加費用も機種の制約もありません。普段からコンタクトを使っている人なら、まずこの方法で試すのが合理的でしょう。ただし「コンタクトは目が疲れるので家ではメガネ」という人にとっては、自宅での動画視聴や作業用途と相性が悪いという現実的な問題があります。
筆者自身は Even G2 向けのアプリを開発していて、テスト中に長時間グラスを掛け続けることが多いため、「掛けっぱなしでも視界が確保できるか」は機能以前の前提条件だと考えています。どの選択肢が合うかは、使用時間と利用シーン(外出先か自宅か)でほぼ決まります。
SECTION 02主要機種の度付き対応状況(公称ベース)
次に、日本で入手しやすい主要機種の度付き対応を、各社の公式発表ベースで整理します。なお対応状況は変わる可能性があるため、購入前に必ず公式サイトと提携レンズ店の最新案内を確認してください。
| 機種・シリーズ | 方式 | 公称の対応状況 |
|---|---|---|
| XREAL One / One Pro | 度付きインサートレンズ | レンズ専門店 JUN GINZA が公式提携レンズ店として度付きインサートに対応 |
| Rokid(AIグラス) | 度付きインサートレンズ | 同じく JUN GINZA が公式提携レンズ店として案内 |
| Ray-Ban Meta(Gen 2) | フレームに度付きレンズ | 度付き対応モデル「Ray-Ban Meta Optics」を公式に展開 |
| SABERA(jig.jp×鯖江) | フレームに度付きレンズ | 近視 -6.00D までの度付き対応を公称(Makuake発の国産プロジェクト) |
| Even G2 | 度付きレンズ(HUD型) | JUN GINZA の提携対象ブランドとして案内されている |
ポイントを補足します。まず XREAL One / One Pro は、映画館サイズの仮想画面で動画視聴や作業をするディスプレイ型で、Amazonでも正規取扱があります。度付きインサートはレンズ専門店の JUN GINZA が公式提携レンズ店として加工を請け負っており、「本体を買ってからインサートを作る」という流れが確立しています。XREAL One Pro 本体の使用感については別記事「XREAL One Pro レビュー」で詳しく書いています。
Ray-Ban Meta(Gen 2)は2026年5月21日に日本発売されたカメラ・スピーカー搭載型(ディスプレイなし)で、度付き対応の Ray-Ban Meta Optics が公式ラインナップにあります。ディスプレイがない分「レンズ=普通の視力矯正レンズ」として扱えるため、メガネユーザーにとっては最も導入のハードルが低い部類です。
SABERA は jig.jp と鯖江のメガネ産地が組んだ国産プロジェクトで、近視 -6.00D までの度付き対応を公称しています。「最初から度付き前提で設計された国産スマートグラス」という立ち位置は、メガネの産地らしい着眼点だと感じます。
Even G2 のような HUD 型(視界の隅に緑単色の文字情報を表示するタイプ)も、JUN GINZA の提携対象ブランドとして案内されています。ただし HUD 型には表示の焦点距離という固有の論点があるため、後述のセクション5で別途説明します。
SECTION 03度付きレンズ入手の一般的な流れ
インサートレンズ方式の場合、入手までの流れはおおむね次のようになります。機種や店舗によって細部は異なるので、あくまで一般的な手順として読んでください。
まず最初にやるのは本体の購入です。インサートレンズは機種ごとに形状が異なるため、本体(または機種の確定)が先になります。Amazonや量販店で買った本体でも、対応機種であれば提携レンズ店で加工を受けられるのが一般的です。
本体が決まったら、度数情報を用意します。眼科で発行してもらう処方箋(眼鏡作製指示書)か、いま使っているメガネを作ったときの度数データが必要です。メガネ店で作った場合は、購入店に問い合わせると度数記録を教えてもらえることが多いです。度数が古い(2年以上前など)場合は、この機会に眼科やメガネ店で測り直すことをおすすめします。スマートグラスは目との距離や使用時間が通常のメガネと異なるため、現在の正確な度数で作るほうが結果的に満足度が高くなります。
度数がそろえば、対応レンズ店に注文して加工してもらいます。XREAL や Rokid であれば公式提携レンズ店の JUN GINZA に、機種名と度数情報を伝えて注文します。店頭での相談のほか、オンラインでの注文に対応している場合もあります。加工後、インサートフレームを本体に装着すれば完了です。
最後に、装着して見え方を確認します。表示の文字がくっきり読めるか、長時間掛けてズレや圧迫がないかをチェックし、違和感がある場合は早めにレンズ店に相談してください。なお、フレーム自体が顔に合っていないとレンズが合っていてもズレて見えづらくなります。日本人の顔幅・鼻の高さとスマートグラスの相性については「日本人の顔に合うスマートグラスは?」で別途まとめています。
SECTION 04費用はどう考えればいいか
度付きインサートの費用について、この記事ではあえて具体的な金額を書きません。理由は単純で、機種・度数・レンズの種類(薄型、ブルーライトカットなどのオプション)によって大きく変わるためです。古い金額情報を信じて予算を組むと、注文時に食い違いが起きます。
考え方としては次の2点を押さえておけば十分です。まず、本体価格とは別にレンズ費用がかかる前提で予算を組むこと。インサート方式の場合、本体を買っただけでは視力矯正は完結しません。そのうえで、正確な費用は注文前にレンズ店へ直接確認することです。度数や希望オプションを伝えれば見積もりを出してもらえます。強度数の場合は薄型レンズを勧められることがあり、その分費用が変わるのもメガネ作りと同じです。
SECTION 05注意点:強度近視・乱視・HUD型の焦点距離
最後に、メガネユーザーがつまずきやすいポイントを挙げておきます。
強度近視や強い乱視がある人は、まず対応範囲の確認が欠かせません。度付き対応を謳う製品でも、対応できる度数には範囲があります。たとえば SABERA は近視 -6.00D までを公称しており、それを超える度数では対応可否の確認が必要です。インサート方式でも、レンズの厚みや重量の関係で対応範囲や推奨レンズが変わることがあります。乱視や遠近両用(老眼)への対応も機種・店舗ごとに異なるため、自分の度数を伝えたうえで「作れるか」を先に確認してください。
HUD型には、表示の焦点距離との相性という固有の論点もあります。Even G2 のような HUD 型は、視界の先の空間に文字が浮かんで見える設計です。表示は光学的に一定の距離にピントが合うよう設計されているため、自分の視力矯正がその距離に合っていないと、風景は見えても文字がにじむ、あるいはその逆が起こり得ます。筆者もアプリ開発のテストで「実空間と表示の両方にピントが合うか」が想像以上に重要だと実感しました。HUD 型を検討する場合は、度付きレンズの相談時に「表示の見え方」も含めて確認することをおすすめします。
個人輸入機の場合は、度付き以前に確認すべき問題があります。海外通販で安く買えるスマートグラスの中には、日本の技適マークがないものがあります。Bluetooth や Wi-Fi を搭載した機器を技適なしで国内使用すると電波法に抵触し得るため、度付き対応を調べる前にまず技適の有無を確認してください。詳しくは「スマートグラスと技適」にまとめています。また、国内正規流通でない機体は提携レンズ店の加工対象外になる場合もあります。
SECTION 06まとめ:視力矯正の確認は機種選びの最初に
スマートグラス選びでは表示方式や機能に目が行きがちですが、メガネユーザーにとっては「自分の度数で快適に見えるか」がすべての前提です。順序としては、自分の度数を把握し、候補機種の度付き対応方式(公式対応/インサート/コンタクト併用)を確認したうえで、インサートが必要なら提携レンズ店に対応可否と見積もりを問い合わせ、最後に本体を購入する、という流れが最も手戻りがありません。
幸い、2026年現在の日本では、XREAL・Rokid のような提携レンズ店経由のインサート対応、Ray-Ban Meta Optics のような公式度付きライン、SABERA のような度付き前提の国産設計と、選択肢が出揃ってきました。筆者自身、開発仲間から「視力が悪いと無理でしょう」と聞かれるたびに、ここ数年で選択肢が一気に増えたと感じています。あとは自分の度数と使い方に合った方式を選ぶだけです。
SOURCES主な参照元
- XREAL 公式サイト(度付きインサートレンズ・提携レンズ店の案内)
- JUN GINZA 公式サイト(スマートグラス向け度付きレンズ対応の案内)
- Meta 公式発表(Ray-Ban Meta Gen 2 日本発売・Ray-Ban Meta Optics)
- jig.jp / SABERA プロジェクト公式発表(Makuake・度付き -6.00D 対応の公称)
- Even Realities 公式サイト(Even G2 製品仕様)
- 総務省 電波利用ホームページ(技適マーク・技術基準適合証明の検索)